色のない世界。【上】
あれから喜史様はまだ何かを考えていて、樹様と梨緒様は言い合っているけどすぐに樹様が負けて、悠汰は欠伸をしながらも時々その会話に入っている。
これが『家族』というものなのだろうか。
「…ふふっ」
「…美桜…?」
気付けばいつの間にか笑っていた。
私が笑い出すと、部屋は静かになった。
隣の悠汰は不思議そうな表情をして私を見ている。
「あ、すみません。
家族というものに初めて触れたので、皆様のやり取りを見ていたらとても温かい気持ちになって…つい」
九条院家とは違う。
黒女を巡って時期当主の座を巡って兄弟同士で争うあの家とは違い、ここはとても温かい。
どんなに言い合っていても、あの兄弟達のように憎み恨みがない。
皆様、すごく楽しそう。
私の言葉を聞いた喜史様が、ふっと笑った。
「…美桜ちゃん。いや、美桜、今日から君も私達の家族だ。だからなんの遠慮もすることはないよ。
俺達と普通に話して、こうして言い合っていいんだ」
…私が家族?
喜史様、樹様、梨緒様、そして悠汰の家族?この私が?
でも私は…
「私は皆様と血も繋がっていなければ、いきなりやってきた部外者。
そんな私が家族だなんて……」
いいのですか?
この言葉は悠汰が私の手を握ったことで、言えなかった。
悠汰を見ると悠汰は真っ直ぐに私を見つめ、微笑んでいる。