色のない世界。【上】
「血の繋がりなんて関係ねぇよ。俺らにとって大切な存在、それは全部家族になるんだ。側近のヤマトにテツが家族であるように、お前も俺らにとっては家族なんだ」
大切な存在が全部家族になる?
悠汰の言葉が分かるようで、分からなかった。
『家族』…夫婦の配属関係や親子・兄弟の血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団。
辞書にはそう書いてあった。
だから家族というのは、血の繋がりのある者同士のこと。
私で言うならばお母様やお父様、そして湊兄様を始めとした兄弟達のことを家族と言うのではないのだろうか。
理解していない私に、梨緒様は優しい声で教えてくれた。
「つまり、美桜さんは私達にとって家族のように大切な存在。
それは、家族も同然ってこと。お父さんと悠兄の言い方が分かりづらくてごめんね?」
ニコッと笑う梨緒様の言葉には嘘を言っているようには見えない。
梨緒様の言葉に悠汰と喜史様は反論していたけど、すぐに梨緒様に負けてしまう。
大切な存在。
それは例え血が繋がっていないとしても、家族のような存在。
皆様は私にそう言ってくれているんだ。
私はここにいていいんだと、外の世界に存在してもいいんだと、言われているようだった。
道具の私が外の世界になど出てはいけないのではないか、そんな気持ちが少し心に残っていた。
でも皆様、彼等がその気持ちを優しく洗い流してくれた。
『あなたはここにいていいんだよ、私達の家族なのだから』
この言葉で私の存在を認めてくれる。