色のない世界。【上】
私は外の世界にいることを認められたの?
ねぇ、悠汰。
「…悠汰、どうして悲しくないのに涙が出るの…っ?
悲しくないから止めようとしても、止まらないのよ」
何回も手で拭っても、目から涙が止まらない。
あの屋敷から離れる時のような悲しみはない。
それなのに、次から次へと涙が溢れてくるの。
どうして?
すると私の手を握っていた悠汰の手が離れ、気付けば悠汰の胸の中に引き寄せられていた。
「それは悲しい時の涙じゃねぇ。
…………嬉し涙だ」
…嬉し涙?
辞書にそんな言葉が載っていた気がする。
『嬉し涙』…嬉しさのあまりに出る涙。
そうか。嬉しいんだ。
私は外の世界にいることを認められた、そう思うと嬉しくて涙が出たのね。
お母様が私の誕生日の時、一度だけ『産まれてきてくれてありがとう』と言って笑いながら泣いていたことがあった。
それも、嬉し涙だったのかな?
私のことを思って嬉し涙を流してくれるのも、すごく嬉しいことなのね。
外の世界に出てよかった。
外の世界に出たことで、こんな素晴らしい感情を知ることが出来たのだから。
私は泣き止むまで、悠汰の胸の中で嬉し涙を流した。