色のない世界。【上】
bird folded wings
【side ???】
九条院家地下牢。
主に謀反を起こした護衛人が連行される牢。
九条院家の恐ろしさからこの牢に入る護衛人は少なく、めったに人は出入りしない。
そんな地下牢への階段は当然、俺の足音しか聞こえない。
足音と時々聞こえる金属音は、牢の鍵が動く音。
めったに収容される者がいないこの牢に、一人の護衛人が入ったと話を聞いた。
主人が本家に用があったため、付き添うついでにここに立ち寄った。
階段を下りるとかなりコンクリートが古くなり、鉄の柵は錆びている。
護衛人が入れられている牢へと足を運ぶ。
牢に入れられた彼女は全身傷だらけで、いつも一つにまとめていた髪もおろされている。
手足を鎖で縛られ、手は吊るされるように上に持ち上がっており、捕らえられたと表現した方が正しい。
数少ない見張りから借りた鍵を使い、牢を開ける。
足音をたてて近付いても、彼女は俯いたまま。