色のない世界。【上】
先程から湊は俯き黙ったまま。
ついに怒りが頂点に達し、何も言えなくなったか。
「そんなに怒るなら、憂さ晴らしに私を殺せばいいだろ。
私はもう人生に後悔などない。苦しめたいなら苦しめて殺せばいい」
私はもう願いを叶えた。
美桜様を自由にするという願いを。
だから誰に殺されようと構わない。
いや、違う。
殺して欲しい。
こんな牢で拷問を受けて一生苦しむのなら、死んで楽になった方が何千倍もいい。
私にはもう生きる理由などないのだから。
生きた屍など、ごめんだ。
「…くくくくくっ…」
「……?」
突然湊が肩を震わせて、笑い出した。
顔は俯いたままだが、小さい笑い声が聞こえる。
「残念だったな、涼音!お前はまだ死ねねぇんだよ!
お前は俺に利用されてから死ぬんだ!」