色のない世界。【上】
利用……?
何を言ってるんだ、こいつは。
考えている間もなく、牢の鍵が開けられる。
堂々とした足取りで私に近付き、藤馬は吊るされている私の手の鎖を刀で斬った。
だが手の鎖は繋がれたままで、自由はきかない。
感覚が戻ってくる両手をただ驚いて見つめていると、私の体を影が覆い被さった。
見上げれば湊が私を見下すように見つめていた。
「この前はお前に邪魔されたが、今度は利用させてもらうぜ?」
ニヤリと不適に笑う湊。
私を利用して一体何をしようと……
「……っ!まさか!」
湊がこれから何をしようとしているのか分かってしまった私は、湊を睨む。
だが湊は表情一つ変えない。
自分のことしか考えてないように見えて、こいつは美桜様の性格までも把握している…!
そうこうしてるうちに手の鎖を藤馬に引っ張られ、牢の外に出される。
こんなことになるのなら、もっと早くに死んでおけばよかった。
私が生きているせいで、また美桜様が連れ戻されてしまう…!
坊主、美桜様を手放すな…!
美桜様、どうか私のことなど忘れてください…!
【side end】