色のない世界。【上】
涼音が捕まってることが事実なら、
「助けに行きます!今すぐに涼音を!」
涼音が怪我をして苦しんでるところは何度も見てきた。
もうこれ以上、涼音が苦しむのは見たくない。
喜史様や樹様達は驚いて私を見ている。
彼等に助けに行くという選択肢がないのなら、私一人でも…!
「お前が行って何が出来る?」
誰もいないはずの縁側から声が聞こえた。
振り返ると煙草のような煙を出した物を持った男性がいた。
「じじい…」悠汰が小声でそう言ったから、きっと彼は悠汰のお爺様なんだろう。
お爺様は鋭い目で私を見た。
「逃げてきた九条院家に戻って、涼音が命懸けでお前を助けたのに、お前はそれを無駄にしようとしている」
どういう…こと?
涼音が命懸けで私を助けた…?