色のない世界。【上】
magical power
『今日からここが君の部屋だ。好きに使っていいよ』
喜史様に言われたこの部屋は私がいた屋敷よりは小さいけれど、一人には十分すぎるくらい広い。
一階は和風の家なのに、二階は洋風の部屋があった。
私は迷わず悠汰の隣の洋風の部屋を選んだ。
涼音が捕まったと知り、すぐに助けないとという思いがあった。
『お前が行って何が出来る?
逃げてきた九条院家に戻って、涼音が命懸けでお前を助けたのに、お前はそれを無駄にしようとしている』
お爺様の言う通りだった。
私には何も出来ない。
涼音を助けに行ったところで、私が捕まり涼音は自由になる。
でもそんなの涼音は望んでいない。
九条院家にいた頃は『繁栄のための道具』という、道具だけど私にも出来ることがあった。
でも外の世界に出た私には、何もない。
フツフツと感じたことのない苛立ちを感じた。