色のない世界。【上】
「涼音は私にたくさんのことを教えてくれた。
徹底的に言葉遣いを厳しく教えてくれたし、その言葉の使い方もお母様からもらった辞書の最初から最後までしっかり教えてくれたわ」
涼音が私に何かを教える時はすごく厳しかった。
それが嫌で、何度もお母様のところに逃げてはお母様を困らせて、涼音を怒らせていた。
外に出れなくてつまらなかったけど、涼音と過ごしていてつまらいなんて感じなくなった。
「でもそんな日々もお父様の言葉で、全て消えてしまった」
私が10歳の時、私はお父様から黒女の導のことを聞いた。
私は一族の繁栄のための道具で、一生外に出ることなく、子作りのために生き、次の黒女を産んで死ぬのだと。
10歳で、私は自分の生きている意味が分からなくなった。
「…っ!ゆ、悠汰…?」
いきなり悠汰に強く抱き締められた。
きっと私の過去を聞いて、心配してくれてるんだ。
私は優しく悠汰の背中を叩いた。
「でもね?そんな私に涼音は笑顔でいることを教えてくれたの」
「…笑顔?」
理由が分からない悠汰は私から体を離して、真っ直ぐに私を見つめた。
悠汰の言葉に私はコクリと頷いた。