色のない世界。【上】
ー私はお父様の言葉を聞いてから部屋に籠ってしまったー
『涼音、私ね子どもを作るための道具なんだって。
人間じゃないんだよ、道具だってお父さまに言われた』
『美桜様……』
『人間じゃないから外にも出ちゃいけないし、関係ない人と話してもいけないんだって。
そんな生活を毎日送って私は生きている意味、あるのかな?』
ぐにゃ
『…っ!
しゅじゅね!いひにゃりにゃにしゅるの!?
(涼音!いきなり何するの!?)』
『何とは、美桜様の頬を引っ張っているのですが?』
『ぷはっ!それは堂々と言うことじゃないよ!
だからどうしてそんなこと……』
『笑ってください』
『え?笑う……?』
『笑顔というのは誰かを笑顔にするだけでなく、傷ついた心も温かく包み込んで癒してくれる魔法の力なんです。
悲しい時、苦しい時こそ笑ってください。
私はあなたの笑顔で苦しい修行も乗り越えてきたんです』
だから、笑顔を見せてください。
涼音は眉をハの字にして笑った。
それから涼音は笑うことがなかった。
私のことを『美桜様』と呼ばず、『お嬢様』と呼ぶようになったのもこの時からだった。
そして涼音は私が外に出る時、久し振りにあの悲しそうな微笑みを見せた。