色のない世界。【上】
「だから私はいつも笑顔でいるようにした。
でも幽閉されて次第にその笑顔も色のないものになってしまったけど」
涼音が私のことをお嬢様と呼ぶようになってから、私も過去を閉ざすように笑わなくなった。
そんな時に悠汰に出会った。
悠汰が隣にいるだけで、昔のように笑うことが出来た。
涼音も…
「涼音の笑顔を……もう一度見たかった…」
私の隣で、私の笑顔に釣られて涼音も笑顔になる。
そんな昔の生活に戻りたい。
私を助けるために涼音だけが苦しんで悲しむのは、嫌だ。
「…だったらお前があいつを助けて、笑顔にすればいい」
「…え?私が?涼音を助けて、笑顔に?」
悠汰の言葉を繰り返すと、悠汰は微笑んで頷いた。
私が涼音を助けて、笑顔に………
「出来るのならそうしたい。
でも私じゃ、私一人じゃ涼音を助けることなんて……」
それに私一人が助けに行ったところで、私は絶対に捕まってしまう。
また幽閉されて、あの生活に戻ってしまう。
涼音を助けたい、でもあの狭く閉ざされた道具としての生活なんて嫌だ。
この矛盾をどうすればいいの?
「…はぁ…あのなぁ~…」
俯いて考えていると、頭上から悠汰の大きなため息が聞こえた。
顔を上げると、悠汰の両手で頬を挟まれ無理やり悠汰の方に向かされた。