色のない世界。【上】
「誰が一人で助けに行けなんて言った?
お前は何でも一人でやろうとするな、よく周りを見ろ」
「周り……?」
悠汰の言葉の意味が分からずに、首を傾げる。
すると部屋のドアが開いて、そこに立っていたのは梨緒様とヤマト、テツだった。
「よく見ろ。
お前の周りには誰がいて、どんな存在なのかを」
梨緒様、ヤマト、テツ、そして悠汰。
彼等は私に大切な家族だと言ってくれた。
家族は誰よりも何よりも大切な存在で、どんなことも言い合えてどんなことも助け合える。
……助け合える…?
悠汰の言いたいことが分かり、目を見開く。
それを見た悠汰は私の両手を優しく握る。
「お前は一人じゃないだろ?
俺がいて梨緒がいて、兄貴、親父、じじい、ヤマトにテツもいる。
俺らはみんな家族で、家族はみんなで手を取り合って生きていくんだ。
あいつをお前一人で助けようとなんてするな。
周りを頼れ、俺ら家族を信じろ」
「美桜さん、私はいつでもあなたの味方だよ?」
「「美桜嬢!俺らもいます!!」」
そうだ。
私は一人で涼音を助けようとしてた。
一人で助けて、涼音を自由にしようとばかり考えてた。
一人じゃ、何も出来ない。
だから周りには私を支えてくれる人達がいる。
ベッドから降りて、ベッドの横に立つ。
「…お願いします。涼音を助けたいので力を…力を貸してください…!」
頭を下げるのは初めてだった。
誰かに頼るのは、外の世界に出る時以来だから二回目だった。