色のない世界。【上】




「誰が一人で助けに行けなんて言った?
お前は何でも一人でやろうとするな、よく周りを見ろ」


「周り……?」




悠汰の言葉の意味が分からずに、首を傾げる。




すると部屋のドアが開いて、そこに立っていたのは梨緒様とヤマト、テツだった。




「よく見ろ。
お前の周りには誰がいて、どんな存在なのかを」




梨緒様、ヤマト、テツ、そして悠汰。
彼等は私に大切な家族だと言ってくれた。




家族は誰よりも何よりも大切な存在で、どんなことも言い合えてどんなことも助け合える。




……助け合える…?




悠汰の言いたいことが分かり、目を見開く。
それを見た悠汰は私の両手を優しく握る。




「お前は一人じゃないだろ?
俺がいて梨緒がいて、兄貴、親父、じじい、ヤマトにテツもいる。
俺らはみんな家族で、家族はみんなで手を取り合って生きていくんだ。


あいつをお前一人で助けようとなんてするな。
周りを頼れ、俺ら家族を信じろ」


「美桜さん、私はいつでもあなたの味方だよ?」


「「美桜嬢!俺らもいます!!」」




そうだ。
私は一人で涼音を助けようとしてた。




一人で助けて、涼音を自由にしようとばかり考えてた。




一人じゃ、何も出来ない。
だから周りには私を支えてくれる人達がいる。




ベッドから降りて、ベッドの横に立つ。




「…お願いします。涼音を助けたいので力を…力を貸してください…!」




頭を下げるのは初めてだった。
誰かに頼るのは、外の世界に出る時以来だから二回目だった。




< 176 / 268 >

この作品をシェア

pagetop