色のない世界。【上】
i stay near you
【Side 悠汰】
部屋が明るくなってきて、自然と目が覚める。
いつもはこんな明るさじゃ目は開かないのに、眠りが浅いせいで早く目が覚めてしまった。
眠りが浅いのも昨日の胡梅の話があってからだ。
あの美桜の表情が頭から離れねぇ。
-昨日美桜が涼音を助けて欲しいと俺らに頼んだ後-
俺らは美桜の部屋に集結した。
「仕入れてきた情報を伝えるわ。
先程、九条院湊の屋敷に潜入してきたわ。そしたら気配に鈍い護衛人の藤馬が私の気配に気付いていたの。
いや、気付いていたと言うよりは、私が来るのを待っていたようだった。
藤馬が私に差し出してきたのは、一枚の紙よ」
胡梅は胸の谷間から二つ折りになった紙を俺に渡した。
隠しておく場所がおかしいが、今はそんなことに突っ込んでる暇はねぇ。
俺が紙を開くと、美桜が隣にやって来て紙を覗いた。
『美桜を渡せば涼音を解放する。美桜一人で来いとは言わない。皆さん総出でお越しください』
紙にはこう書いてあった。
美桜を渡せばあいつを解放する?
端から俺らには美桜を渡すつもりはないのを分かって言ってる。だからあいつを利用して手に入れようってことか。
しかも皆さん総出でお越しください?
美桜を手に入れれば涼音(あいつ)も俺ら諸共消そうって魂胆が見える。
こいつは結局、美桜だけを手に入れることを目的にしてる。
ついでに俺らもやっとく、そんな考えだろう。
舐めやがって。
美桜はこんな文でお前のところになんか行くわけないだろ。
美桜はもう外の世界に出たんだ。
自ら籠の鳥になろうだなんて考えはないはず。
美桜もそう言うと思い、俺は美桜を見た。
でも美桜は何も言わずに真剣な目で紙を見ている。
そんなわけ…ないよな?美桜。
お前が自ら身を渡すなんて、しないよな?
俺らしくもなく、美桜の何も言わない様子に不安になった。