色のない世界。【上】
昨日の出来事をザッと思い出しても、やっぱり頭に残るのは九条院湊の紙を読んだ後の美桜。
あの目は『自分が犠牲になって助かるのなら』、そんなことを考えているような目だった。
今の美桜に限ってそんなことはないと思う。
だがそう思っているのではないか、そんな推測の考えが頭から離れねぇ。
こんなこと考えてたらキリがない。
顔洗って美桜を起こしにいこう。
あいつのことだ、起こさないと昨日のように部屋に引きこもるに違いない。
俺はベッドから起き上がり、着替えて洗面所で顔を洗った。
それから美桜の部屋の前に立った。
コンコン
「美桜、起きろ。もう朝だぞ」
部屋のドアをノックして声をかけるが、部屋からは物音すら聞こえない。
まだ寝てるのか?
そう思って部屋のドアをゆっくり開けた。
鍵締めとけって言ったのに開けっぱなしで、寝やがって。
あとで言ってやろうと思いながら美桜の部屋の中に入る。
「…美桜、もう朝だ……っ!?」
美桜が寝ているであろうベッドを見て、言葉を失った。
ベッドは平らで、人が寝てるようには見えなかった。
俺はすぐに部屋を飛び出した。