色のない世界。【上】
美桜を探して部屋を片っ端から見ていく。
「おはよーごぜいやす!若!」
なんて清々しく挨拶してくる組員の声は頭に入ってこない。
美桜!
まさか一人で行ったんじゃ………!?
嫌な予感が当たってしまったと思った。
「わ、若!?」
テツがトイレで用を足していても、構わずドアを開け美桜がいないか確認していった。
どの部屋を見ても美桜はいなかった。
「くそ!気付いた時に声をかけていれば……!」
今頃美桜は一人で行こうとは考えなかったはずだ。
俺が後悔したその時。
「わ!やっぱ似合うよ、美桜さん!」
梨緒の部屋から梨緒の声がした。
それだけじゃない。
梨緒今、"美桜さん"と言ったか?
ダン!
「美桜!!」
梨緒の部屋を勢いよく開けた。
視線の先には梨緒と、梨緒のワンピースを着た美桜がいた。
「悠兄!ノックもせずにヒトの部屋入ってこないで!」と梨緒が言っているが、今は美桜しか目に入らない。
美桜は薄桃色の膝丈ワンピースを纏っている。
「悠汰、見て!
梨緒様が大きくて着れないということで頂いたの!どう?似合ってる?」
美桜はその場で一周回った。
俺は堪らず美桜に駆け寄り、力強く抱き締めた。
美桜…頼むから俺を…不安にさせないでくれ。
俺の傍から消えないでくれ。
【Side end】