色のない世界。【上】
蘭子の言葉にもう慣れたと一言だけ言う。
夏帆が「痛そう…」と言って俺の左足を見つめる。
蓮が黙って俺の肩に手を置く。
俺のこんな切り傷だけでしんみりしやがって。
…たいしたことねぇのに。
こんな空気を1人のKY男が断ち切る。
「おっ、悠汰じゃん!全然学校来ねーからさみしかったぞ!」
KYキング・疾風(はやて)が間の抜けた声でやってきた。
そして俺の左足の包帯を見て驚く。
「どうしたんだよ、その足!誰にやられたんだよ!?」
疾風のこの言葉に夏帆の前の席から怒りのオーラを感じた。
それはもちろん蘭子のこと。
「…お前、ほんまええ加減にせぇよ。後から来ておいてさっきと同んなじ話し切り出しおって」
「や、だって俺後から来たし!?悠汰の足見れば誰だってどうしたのって聞くだろ!?」
終始、疾風の声が裏返る。
動揺してるのが分かる。