色のない世界。【上】
you smile up free wings
【side 涼音】
ずっと、目の前で起きている光景が理解出来ない。
美桜様が坊主とその他を引き連れて、私を助けに来た。
でも美桜様は湊に捕まってしまい、強烈な音に苦しんでいる。
坊主達は大勢の護衛人達相手に、互角かそれ以上の力で護衛人達を次々と倒していく。
どうして。
どうして私を助けるために美桜様がガラスの檻の中で苦しんでいるのか、坊主達が必死に戦っているのか、分からない。
『掟を破った者にはそれ相応の罰を』
お母さんやお父さん、兄弟子達からそう教わってきた。
九条院家の大事な黒女を逃がすことは重罪。
況してや敵に加担するなど、謀反の罪もある。
私は殺されて当然の罪を犯した。
それなのにどうして私は助けられようとしている?
罪人を助けて、一体何の得があるというのだろう。
罪人を助けたところで共犯者となり、己もその罪を背負わなければならなくなるのに。
馬鹿でもそれくらい分かるはずだ。
それなのに…
「涼音、待ってて…すぐに助けるから…」
美桜様(彼女)はどうして苦しんでも尚、私を助けようとするんだ…?
どうしてどんなに苦しめられても起き上がり、私に微笑むんだ…?
私はこんなの望んでなかった。
ただ美桜様に自由になって欲しかっただけなのに。
"道具"としてじゃない、"人間"として生きて欲しかっただけなのに。