色のない世界。【上】
だが湊は一歩遅く、湊が銃弾を発射する前に常盤胡梅は胸の谷間から銃を取り出し、湊の持っているスイッチを銃弾で破壊した。
湊はその衝撃でその場に倒れてしまった。
常盤胡梅は銃口から出た煙に息を吹きかけると、言いかけた言葉を続けた。
「…主を助けるのも良し、今のあなたは何でも出来るのよ?自由なのだから」
常盤胡梅は妖艶に笑うと高いヒールで私を拘束していた鎖を砕き、持っていた刀を床に放り投げた。
…私は…自由になったのか?
私を縛り付けていた九条院家の紋章もない。
私を拘束していた鎖もない。
ここから逃げても、自ら命を絶っても誰からも罰を受けることはない。
だったら……!
刀を手に取り、立ち上げる。
乱れた髪を片手でまとめ、肩から下の髪を刀で一気に斬り落とす。
切った髪はその場に落とし、美桜様がいる檻に近付く。
短く息を吐くと、分厚いガラスに蹴りを入れた。
ガラスは徐々にヒビが入り、バリンという音をたてて割れた。
ガラスが割れた瞬間に素早く倒れている美桜様を抱え、檻の外へ出る。
美桜様はゆっくりと目を開けると、弱々しくも微笑んで傷だらけであろう私の頬に触れてきた。
「…私の…笑顔は…どうだっ、た?」
ここから先、私がいつどこで何をしようと、誰にも罰せられないのなら。
「……完璧です」
私は…美桜様(あなた)を守る刃になろう。
【side end】