色のない世界。【上】
「お前、私を誰だと思ってる?舐めるなよ」
涼音はまた前を向くと、指の関節をボキボキと鳴らした。
「誰一人手を出すな。こいつらは私が倒す」
「…っ!殺せ!涼音を殺せ!」
涼音の言葉を聞いて苛立った湊は涼音を指差し、護衛人達に殺すように命令した。
護衛人達は涼音に襲いかかるのを躊躇っていたが、湊の命令に逆らえず一斉に涼音に襲いかかった。
護衛人達は皆刀を持っていて涼音も胡梅から刀を受け取りそれを持っていたが、護衛人達の動きを見て手に持っていた刀を床に放り投げた。
そして目に見えぬ速さで敵の急所を腕と脚だけで攻撃し、前線の敵をあっという間に倒した。
涼音は余裕そうに微笑んだまま、護衛人達の後ろで脅えている湊を見た。
「こんな奴ら、武器を使わなくても倒せる」
「…っ!」
涼音の目線に湊は恐怖で言葉が出なかった。
次々と敵を倒していく涼音を悠汰達は唖然と見ていた。
「強すぎる…あんなに強い人、私の道場にもいないよ」
空手・柔道・剣道で一級を持っている梨緒でさえ、開いた口が塞がらない。
悠汰もヤマトもただ驚き、涼音の戦う姿に目が離せなかった。
「…美桜?」
すると自分の腕の中にいる美桜僅かに動いたのが分かり、悠汰は美桜を見た。
「…黒女を守るのは……柊家の中で最強と認められた者なの…
私の護衛人となった涼音は……数百人といる柊家の中でたった一人の…最強の名を持つ者よ…」
美桜は目を細めて涼音を見つめた。