色のない世界。【上】
逆に手当てをして女の裸体を見て恥ずかしそうにしてる奴の言動が、理解不能だった。
「…はぁ…あのな~」
奴の言動について考えていると聞こえてきたのはため息と呆れた声。
声のする方を向くと、奴は勢いよく私を指差す。
「柊家がどうなんだか知らねぇけど、お前が女なのには変わりねぇんだよ!
そう易々と体を異性に見せるな。そして体を見せることに少しは何かしらの反応を見せろ!」
『…涼音。怪我の手当てをするのは全然構わないけど、そうやってすぐにためらいもなく肌を見せないようにね?
涼音は柊家本家の嫡子とはいえ、元は可愛い女の子なんだから』
奴の言葉が昔従兄に言われた言葉と重なって聞こえた。
どうして今さらこんなことを思い出すのだろう。
もう奴とは決別したのに。
でもどうしてだろう。
「…ふ、……」
「おい!なに笑ってんだよ!こっちは真剣に言ってやってんのに…!」
なんだかすっと体が温かくなるのを感じて、それがむず痒くて笑ってしまった。
そのせいで奴は怒ってしまったが。
「…いや、悪い。つい昔を思い出してしまってな。
とはいっても易々と体を見せた覚えはないぞ?
お前が勝手に脱がせて手当てしたのではないか」
「こいつ…!」
笑ったことを誤魔化そうと奴をちょっとからかえば、予想通りに奴は手を握り怒っている。
なかなか面白いな、こいつ。