色のない世界。【上】
授業中、昼と俺の頭の中は昨日会った女のことでいっぱいだった。
『私は外に出ることのない、繁栄のための"道具"ですから…』
感情とは誰しも当たり前にもっているものだと思っていた。
知らない奴なんているわけない、そう思ってた。
でも昨日、感情の知らない奴と出会った。
自分のことを"道具"という奴と出会った。
俺の周りには変わった奴が多いが、こんなに気になったのは初めてだ。
綺麗で長い髪、深海を見ているような青い目、全体的に細い身体。
一瞬、人形ではないかと思うほど綺麗だった。
…一体何なんだ、あいつは…
「…悠汰?どうした、もう授業終わったぞ?」
疾風に顔を覗き込まれ、ハッと我に返る。
気づけばもう授業が終わっていた。
「学校も終わって、久々の悠汰もいることだし、帰りどっか寄ってこーぜ!」
すでに鞄を持っていた疾風は先を歩き出す。
俺はあぁと短く返事をして席を立つ。