色のない世界。【上】




「悠汰にしては珍しいな、考え事なんて。何かあったのか?」




俺の後ろを歩いていた蓮が横に並んできた。
こいつは何も考えていないようで鋭い。




「…別に」




短く答えると、蓮は困ったように俺を見ていた。
俺は蓮を見ず、廊下の窓から外を見る。




学校の裏には木々の生い茂った裏庭がある。
生徒は進入禁止で入ったことはない。




…そういえばあの女と会ったのもこんな感じに木々が茂ってた。




屋敷の前には大きな桜の木があって…-




山のように傾斜になっている裏庭の上の方を見る。
すると緑の葉の生えた木々の中に一本だけ桜の花をつけた木を見つける。




あの桜…まさか!?




気づいた時には走り出していた。




「おい、悠汰!どこ行くんだよ!」




蓮の言葉に答える余裕はなく、無視してただ走る。




何であいつのことを考えていたのか、何で急に走り出したか、俺にも分からねぇ。




ただあいつに会いたい、そう思ったんだ…




【side end】



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