色のない世界。【上】
俺の言葉に食いついたのは蓮ではなく、夏帆だった。
「蓮また他の女のところにいたの!?」
声と表情からして夏帆が怒っているのは確実で。
それなのに蓮はいつもの平然とした態度で答える。
「当たり前だろ。昨日はちかさんで、今日は洋子さん」
語尾に音符マークがつくんじゃないかというくらいに嬉しそうなカス男。
いい加減病院に行って、性病の検査した方がいいと思う。
それくらいにこいつは数多の女の家に泊まっては渡り鳥のような生活をしている。
その発言の度に夏帆は傷ついている。
「…ばか」
夏帆は蓮に聞こえない声で呟いて、蘭子に抱きついた。
その声が聞こえた俺と蘭子は、身近なことに鈍感すぎる蓮にため息をついた。