色のない世界。【上】
微妙な空気の中にやって来たのは、KYなあいつだった。
「おはよー…って悠汰来てるし!てか夏帆どうした!?」
微妙な空気から一転、辺りは殺伐とした空気に変わった。
その空気を一瞬で作ったのは一人のエセ関西人。
夏帆を撫でる手は優しく見えても、疾風を見る目が明らかに獲物を捕らえた獣のよう。
「その口、永遠に喋れんように縫ったろか?」
「怒るの早くね!?」
来て早々蘭子に怒られた疾風は、蘭子の鋭い目つきから逃れるように俺の後ろに隠れた。
いつも俺を盾にするのやめてくれ。
このやりとりを横目で見ていた蓮は一段落したのを感じると、話を戻してきた。
「それで、学校に来たってことは女とうまくいったんだ?」
こいつの言う"うまくいった"は俺らが思うのと違う意味だと理解するのにそう時間はかからなかった。