色のない世界。【上】




生徒を騒がせている犯人を見た瞬間に歩みを止める。
そして次に出たのは呆れたというため息と、いきなりの頭痛。




そこにいたのは紛れもなく美桜で。




外の人間を珍しく思っているのか目を輝かせて人間観察をしている。




「わ!ほんとに美人!誰待ってるんだろぉ~」


「この辺じゃ見ねーよな!何高なんだろうなー!」


「蘭子も美人だと思ってたけど、それ以上の美女だな」


「黙れクソ眼鏡。あんたのその子供切り落としたるわ」




夏帆や疾風が美桜に興味津々な発言をする中、蘭子とクソ眼鏡は下ネタの言い争いをしている。




こいつらの前で、学校の前で美桜の知り合いだとバレれば一気に噂になるのは間違いない。




クソ眼鏡なんか他のどの奴よりも厄介だ。




とにかくこの人だかりに紛れてここを出て、美桜を別の場所に呼び出す。
涼音(あいつ)に言えば美桜に伝えるだろう。




脳内でこの後の計画を練り、いざ行動に移そうとした瞬間。




「…っ!悠汰…!」




美桜とバッチリ目が合ってしまった。
そして大声で名前を呼ばれた途端、生徒の視線が一斉にこっちを見た。




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