色のない世界。【上】
いつも悠汰には驚かされてばかりだったから。
だから今度は私が悠汰を驚かせようと、悠汰が通う学校の前で悠汰が出てくるのを待っていたのだけど。
「あんなところで何してたんだよ!?」
掴まれていた手がいきなり離れたと思ったら、悠汰は勢いよく振り返って私の両肩を掴んだ。
「何って…悠汰をお迎えに来たのよ?」
悠汰を驚かせようとして行ったのに、何故か悠汰は怒っていて。
どうして?どうしてそんなに怒っているの?
私はてっきり悠汰は驚きながらも少し嬉しそうな顔をしてくれると思ったのに。
「いきなりこんなことしてごめんなさい。
ただ悠汰の帰りが待ち遠しくて学校の前で待ってたら、悠汰も喜んでくれるかと思って…
悠汰を怒らせるならやらない方がよかったわね。
ほんとにごめんなさい」
ただひたすら謝る。
涼音が言ってた、相手を不快にさせてしまったりいけないことをしたら謝るんだって。
『謝る』…自分の過失・罪を認め,すまないという気持ちを相手に伝え許しを求める。わびる。
辞書にもこう書いてあった。
この言葉で悠汰は私のことを許してくれるのだろうか。
それが怖くて悠汰の顔が見れない。
自然と俯いた顔を持ち上げたのは大きくて暖かい悠汰の手だった。