色のない世界。【上】
「お前が来たことに怒ってるんじゃねぇよ。
ただ一人で来て、何かなかったか…その…心配でだな…」
一人で来て?心配?
謎の言葉が続いて頭の中が混乱してしまう。
分からない言葉が続いた時は一つ一つ区切って考えればいいと、確か涼音が言ってた。
「悠汰、私は一人で来てないわ。
何かあってはいけないと涼音が後ろから着いてきてくれたのよ」
「…え?は?」
口をポカンと開けた悠汰に教えるように私は後ろを振り返って電柱を指差した。
電柱のことは悠汰の学校へ向かってる途中で涼音が教えてくれた。
電柱は電気を伝えるための電線を空中にかけわたすための柱らしい。
こんな1本の柱が日常にはかかせない電気を運んでいると考えたら感激したのはつい先程のことで。
そう涼音に言ったら、「電気を運んでいるのは電線ですよ」と苦笑いしながら言われてしまったけれど。
そんな電柱の影から顔を出しているのはいつにもなく目つきを鋭くしている涼音。
涼音の背後からヤマトも顔を出していたのは知らなかった。
それともう一つの言葉は"心配"
『心配』…何か起きはしないかと、気にかけること。不安がること。
悠汰は怒っていたのではなくて…
「私が一人で来たことを心配してくれたの?」