色のない世界。【上】
悠汰を見つめ、その流れで空を見る。
空はあっという間に橙色に染まっていた。
「もうすぐ日が暮れてしまうわ。悠汰、帰りましょ?」
小首を傾げて再び悠汰を見上げる。
悠汰は返事をすることなく、どこか一点を見て考え事をしているよう。
どうしたのだろう。
私は小首を傾げたまま悠汰を見つめ続けた。
しばらくすると悠汰は澄んだ瞳に私を映すと微笑んだ。
「…行くぞ。美桜に見せたいものがあるんだ」
「それって一体…あ、悠汰…!」
私の言葉を待つより先に悠汰は私の手を握って歩き出した。
しっかりと繋がれた手から熱を帯びていく。
手から腕、そして何だか顔まで熱くなってしまった。
どうして手を繋がれただけでこんなにも手が顔が熱くなるのだろう。
小さい頃お母様や涼音と手を繋いだ時は体が熱くなることはなかったのに。
どうして手を繋がれただけでこんなにも心臓の鼓動が速くなるのだろう。
辞書にも載ってないこの気持ちは何と言うのだろう。
自分でも分からない体の変化について考えながらも、悠汰の手を離さないように力を込めて握った。
考えていたせいで私のしたことで悠汰が嬉しそうに笑っていたのに気付かなかった。