色のない世界。【上】
【side 蓮】
今日は一日、悠汰の様子が変だった。
授業中はずっと窓の外見てるし、昼はボーッとしてるし、話しかけても上の空だし。
久々に学校に来てこの調子、何かあったのは明白。
聞いてもしばらくの沈黙の後、はぐらかされるし、かと思ったら今度は突然走りだすし…
これは…匂うな…
「おい、蓮!悠汰急に走ってったけど、どこ行ったんだ?」
話に夢中で前を歩いていた疾風が、前を通り過ぎていった悠汰に疑問を持って戻ってきた。
…ヤバい、匂いすぎて自然と口角が上がっちまう。
俺は笑いを堪えて、口角の上がった口を手で押さえる。
でも肩が震えていて、疾風にはバレバレだろうけど。
笑いを止めて、冷静を装ってメガネを押し上げる。
「…これは女の匂いがするな」
それ以上は言わずに歩き出す。
疾風は「え!女!?悠汰に!?」と言って驚いてる。
悠汰、話聞かせろよ。
まぁ、言わなくても強制的に吐かせるけどな。
【side end】