色のない世界。【上】
悠汰に手を引かれながら歩いてやってきたのはとある山。
悠汰が言うにはこの山は鷹沢組が所有している山らしい。
料理好きな喜史様がキノコ採りや山菜採りなどをするためにあるようなものだという。
それとは別に鷹沢組の組員の皆様が修業をするところでもあるらしい。
そんな山を登っていくと見晴らしのいい丘に辿り着いた。
「…ちょうど見頃だ」
「見頃…?」
悠汰が空を見ながら言った。
私は悠汰の言ってることが分からないながらも悠汰と同じように空を見上げた。
「わぁ…!」
夕空だった空はいつの間にか夜空へと変わっていて、その夜空には満遍なく広がる星々。
星空に包まれているような気持ちになるほど、星空はどこまでも広がっている。
「…美桜」
ずっと見ていても飽きないその景色にただ見惚れていると、優しい悠汰の声が私を呼ぶ。
ゆっくりと声のする方を向くと、悠汰は草が生い茂る丘に寝そべり私を見上げていた。
私と目が合うと悠汰は自分の隣をポンポンと叩いた。
悠汰の隣に来いということなのだろうとすぐに理解し、私は寝そべる悠汰の隣に座った。
すると悠汰は起き上がると私の額を指で押した。
いきなりのことで姿勢を保っていられず、私はゆっくりと地面に倒れる。
頭を地面にぶつけると思い力強く目を瞑っても、その痛みは襲ってこなくて。
代わりに感じたのは柔らかな感触。