色のない世界。【上】
悔しそうな涼音を見て絵里香は苦笑いし、深呼吸してから口を開く。
「……子供を産めない黒女は、"欠陥品"と呼ばれるの。
道具として利用できない欠陥品って。
数年間はそう言われてきた。
きっと今だってそう呼んでくる人達もいると思うけれど」
「……っ」
(子供が産めないとしても結局道具として扱われるのかよ……!)
悠汰はもし美桜がそう呼ばれていたとしたら、そう想像しただけで腸が煮えくり返りそうだった。
「…そう呼ばれた時はもちろん死にたくなるほど辛かったわ。
でも美桜が産まれたことで、周りの目が一気に美桜に向いて、少し、ほんの少し黒女にならなくてよかったと、黒女が産まれてよかったと思ってしまった。
…最低でしょ?私」
悠汰に弱々しい笑顔を見せるが、悠汰は絵里香の辛い笑顔を見れずにすぐに俯いた。
「でも美桜が大きくなるにつれて私になつくようになって、笑顔を見せてくれると次第に美桜に申し訳ない気持ちが大きくなっていったわ。
私が産めない体のせいで美桜が産まれてしまった。
私が黒女になれていれば、美桜はこの世に生を受けなかったかもしれない。
もっと別の形で美桜は産まれて、幸せになれたかもしれない……って」
美桜は私が産ませてしまったようなものよ。
絵里香は僅かに目を潤ませながら眉間にシワを寄せた。