色のない世界。【上】
「この世に何でもできる、完璧な奴なんていない。
誰もが出来損ないの欠陥品だ。
でも自分に欠けた部分を誰かが埋めてくる。
それで"自分"という人間が出来上がるんだ」
私は感情も知らない欠陥品だった。
でも悠汰に出会ったことで知ることのなかった感情を知り、私の欠けた穴を悠汰が埋めてくれた。
そのお陰でまだ不完全ではあるけれど、"私"という人間が出来上がってきている。
私が出来上がって来ていることで、新しい感情も芽生えた。
"誰かを守りたい"という感情。
真が絵里香姉様を守りたいと思うように、
絵里香姉様が私を守ってくださるように、
そして私が悠汰や鷹沢組の皆さんを守りたいと思うように、
出来損ないの欠陥品でも、守りたいものがある。
それは出来損ないだからこそ知ることのできた感情。
きっと悠汰はこのことを言いたかったんだと思う。
その意味を込めて悠汰に微笑むと、伝わったのか悠汰も笑ってくれた。