色のない世界。【上】
「…きゃっ!」
悠汰が口を開いたと同時に突然強風が襲ってきた。
驚いてつい悲鳴をあげてしまった。
いきなり襲ってきた強風のせいで、悠汰の言葉が聞こえなかった。
「悠汰……今なんて言ったの?
風で聞こえなかったわ…ごめんなさいもう一度……」
「…い、言うわけないだろ!
もう寒いから中入るぞ!」
「え、悠汰!?
気になるから教えてよ……!」
強風のせいで悠汰の言葉が聞こえず、気になって何度ももう一度と悠汰に迫っても、悠汰は教えてくれなかった。
何を言ったのかは分からなかったけど、いいの。
悠汰を私の何かで埋められたのだと、それだけでも分かったから。
私は悠汰の欠けた部分を埋められている。
でもいつかは聞かせてね?
聞いたら、それ以上にあなたの欠けた部分を埋めるから。