色のない世界。【上】
「……っ!美桜…っ!」
絵里香姉様は大きな瞳にたくさんの涙をためて、私を優しく抱き締める。
たくさんの苦しみと悲しみを背負ってきた絵里香姉様。
もうそんな苦しみも悲しみも背負わなくていいんだよ。
絵里香姉様につられて流した涙はとても温かかった。
絵里香姉様を乗せた車を見送り、振り返れば悠汰と涼音が微笑んで私のことを待っていた。
絵里香姉様。
屋敷にいた頃はあなただけが私の温もりだった。
でもね?
今はたくさんの温もりが私を包んでくれるの。
一緒に笑い合って、一緒になって悲しんでくれて、私が間違えば怒ってくれて、でもそんな私を守ってくれる。
そんな大切な人(温もり)がたくさんできたの。
だから私は何があってもこの温もりを大切にしたい。
もちろん絵里香姉様もその一人だからね?
絵里香姉様。
次会う時はもっとたくさんのお話を聞かせて欲しいし、私に笑顔を見せて欲しい。
私も姉様にたくさんお話しできるような話題をもって行くから。
だからまたあの温かい温もり(笑顔)を私に感じさせて。