色のない世界。【上】
"ありがとう"と言われてとても気持ちよかったけど、それよりも私には引っかかる言葉があった。
"助けてくれた"
その言葉を聞いてイスから立ち上がり、男性に迫る。
「やはり昨日あなたを窓から追い出したのは、"助ける"ということなんですか!?私はあなたを危難から救ったのですか!?」
ぐいぐい男性に迫る。
真実を確かめたかったから、私のした行為が"助ける"というものなのか。
男性の顔にぐっと自分の顔を近づける。
息がかかりそうなくらい近づいて、ハッと我に返る。
男性の身体は後ろに引いていて、目がかなり見開いている。
また我を忘れて近づきすぎてしまった。
「…ご、ごめんなさい」
私は渋々男性と距離を置く。
そして申し訳なさそうに下を向いた。
しばらくして頭上から声がした。
「まぁ、昨日あの後俺が本当に殺されていたのなら、俺はお前に"助けられた"」