色のない世界。【上】
私が言うと男性、改め悠汰様は一瞬目を見開いて、今までくっついていた額をゆっくりと離した。
その悠汰様の頬はまた少し赤いように見えた。
私はふと部屋にある時計を見る。
時計の針はもうすぐ6時を指そうとしていた。
6時には涼音達がやって来る。
部屋の掃除といって私の様子を見に。
気づけば私の身体は、行動を始めていた。
「…もうじき護衛人が来ます!今度こそ見つかったら殺されます!さ、早く!」
私はまた悠汰様を窓の外へ追い出す。
これが"助ける"ということだと頭の隅で考えながら。
すると急に、悠汰様が勢いよく振り返ってきた。
かなりの勢いに私の身体は反射的に少し後ろへ引いた。
「…名は?」
…え?な?
一体何のことだろう…
理解できずに、無言で首を傾げる。
そんな私を見た悠汰様は、頭を掻いた。
「だから、お前の名前だよ!自分の名前ぐらい分かるだろ?」