色のない世界。【上】




私が言うと男性、改め悠汰様は一瞬目を見開いて、今までくっついていた額をゆっくりと離した。




その悠汰様の頬はまた少し赤いように見えた。




私はふと部屋にある時計を見る。
時計の針はもうすぐ6時を指そうとしていた。




6時には涼音達がやって来る。
部屋の掃除といって私の様子を見に。




気づけば私の身体は、行動を始めていた。




「…もうじき護衛人が来ます!今度こそ見つかったら殺されます!さ、早く!」




私はまた悠汰様を窓の外へ追い出す。
これが"助ける"ということだと頭の隅で考えながら。




すると急に、悠汰様が勢いよく振り返ってきた。
かなりの勢いに私の身体は反射的に少し後ろへ引いた。




「…名は?」




…え?な?
一体何のことだろう…




理解できずに、無言で首を傾げる。
そんな私を見た悠汰様は、頭を掻いた。




「だから、お前の名前だよ!自分の名前ぐらい分かるだろ?」



< 30 / 268 >

この作品をシェア

pagetop