色のない世界。【上】
でも今は悠汰様がいる。
私が少しでも気になったことに答えてくれる人がいる。
何もなかった私の世界に一筋の光が差したよう。
もちろん一日、私のすることも一つ増えた。
悠汰様はいつも夕方にやってくる。
開いた窓から顔を出して、必ず私の名前を呼ぶ。
何で毎回呼ぶのかは分からないけど、嫌な気はしない。
あの人に呼ばれるよりは…
『…美桜…君は僕のだ…』
「…っ!!」
全身に襲いかかる寒気。
私は自分自身を抱き締める。
今にもあの人の声が聞こえてきて、あの人の手が私を汚していきそうで…
そんな時に私の名前が呼ばれる。
「…美桜…?」