色のない世界。【上】
私は首を傾げたけど、悠汰様が待っているように見えたので言われた通り口を開いた。
すると口の中に悠汰様の千切ったパンが、悠汰様の手によって入ってきた。
もしかして食べさせてくれたの?
悠汰様の意外な行動に驚きつつも、口に入ったパンを噛む。
噛んだ瞬間、世界が変わった…
「…すごい…すごいです、パン!触った感じは柔らかくて、食べたら更に柔らかくて、とても…あ、甘い!そうです!甘くて…それで…それで…」
何かを言いたいのに言葉が出てこない。
こういう時、何て言うんだろう…
初めて食べたパンはとても柔らかくて噛めば噛むほど甘さが出てきて、私とても好き。
でもそれを言葉に表現出来ない。
私のいつもの食事は噛むのが少なく、甘さも何もない、ただ空腹を満たすだけのもの。
だからこういう私の好きな食べ物に出会った時に言う言葉を知らない。