色のない世界。【上】
メイドによって白いワンピースに着替えさせられた私の元に、朝食が運ばれてきた。
私は用意されたイスに座り、食事を口に入れる。
口に入れても特に何も感じないし、思わない。
…こういうときにどういう反応をするのかを知らない。
一日私のすることは、三食の食事と読書、そして寝ること。
トイレとお風呂もちゃんとしてる。メイド付きで。
読書は小さい頃、お母様にもらった辞書を何度も読んでいる。
辞書の言葉を指でなぞりながら読んでいく。
すると"感情"という言葉に指の動きが止まる。
『感情』…喜怒哀楽や好悪など、物事に感じて起こる気持ち。
感情…私には一生手に入ることのないもの。
『"道具"であるお前に、そんなもの必要ない』
そうお父様に言い聞かされてきた。
『この屋敷から出ることのない者に与える感情などない』
"物"を見る目でお爺様によく言われた。