色のない世界。【上】
【side 悠汰】
『…おいしい…おいしい!』
そう言って笑顔でパンを噛む美桜。
あまりにおいしそうに食べるから、残りも全てあげた。
コンビニで買ったただのクロワッサンなのに。
俺らにとってはどこにでも売ってる機械で作られた普通のパン。
それを美桜は頬張り子供のように食べている。
あの嬉しそうな顔を思い出すと口が綻ぶ。
自分の知らないことはすぐに興味を持って、俺が簡単に説明すると理解した印のように笑顔になる。
それを見るのが嬉しくて、楽しくて…
だからつい色んなことを教えてしまう自分がいる。
またあの笑顔が見たくて。
ほとんどを知り尽くしたこの世に退屈を感じた時、美桜に会った。
俺の言ったことをなんでも吸収する美桜。
子供のように純粋な、そしてどこかに闇を潜めた瞳で俺を見る。
まるで俺が"世界"そのものであるかのように…