色のない世界。【上】
日本随一の極道一家の組長とは思えねぇな。
ため息一つついて門を開ける。
すると俺の帰宅に気付いた組員が玄関への道を作るように整列する。
「「「「お帰りなさいやせ、若っ!!」」」」
これが俺の日常。
慣れて何とも思わないけど、周りから見たら異常だな。
しかも俺の家族は変人ばかりだと先に言っとく。
代表的なのが親父。
表では怖いツラしてるのに家では…
俺は玄関の戸を開けると走ってこっちに来る足音が聞こえた。
「悠汰!今までどこ行ってたんだ!?暗くなっても帰ってこないから心配したんだぞ!?」
包丁を持ってやってきたのは親父。
オールバックの茶髪に縁なしの眼鏡をかけてる。
ここまではかなり怖そうな組長のイメージだが、今は一つだけズレてるとこがある。