色のない世界。【上】




本来、家事は下っ端の組員がやるのが普通。




だが家は親父が全てやる。




念のためもう一度確認するが、
オールバックの茶髪に縁なしの眼鏡をかけた、
包丁を持ってレースのついた白のエプロンを着ている。




それが日本随一の鷹沢組組長・俺の親父・鷹沢 喜史(たかさわ よしふみ)。




エプロンを着ている組長が全国のどこにいる?
ここしかいないだろ。




親父の表の顔に憧れ、惚れてこの組に入る組員が多いが、このエプロン姿と眩しいくらいの笑顔を見てほとんどの奴は口を開けてア然とする。




見ているこっちが恥ずかしい。




「…どこへ行こうがヒトの勝手だろ。いつまでもガキ扱いすんなよ」




靴を脱いで、鞄をヤマトに渡す。
ヤマトは小走りで俺の部屋に鞄を置きに、テツは俺の脱いだ靴を揃えている。




心配する親父を余所に大広間へと足を運ぶ。




大広間には既に座布団に座る男が1人。



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