色のない世界。【上】
黒髪のセミロングヘアに白のメッシュが入った和服姿の男。
口にタバコを加え、どこか妖艶に笑ってる。
「ガキ扱いすんなよ…ねぇ。俺から見たらお前はいつまで経ってもガキだけどな」
口角の上がった口から白い歯が見えた。
嫌な会話を一番聞かれたくない奴に聞かれた。
玄関から大広間まではそこまで遠くない。
大広間の襖を開けとけば、玄関での会話は筒抜け。
親父との会話をこの腹黒い奴が聞いてたと言うことだ。
「ヒトの会話、盗み聞きしてんじゃねぇよ、兄貴」
「盗み聞きとは人聞きが悪いなー。ここにいれば嫌でも耳に入るんだよ」
タバコを口から出し、煙を吐く。
こいつにあんな会話を聞かれたら、からかわれるのがオチ。
それが腹黒兄貴・鷹沢 樹(たかさわ いつき)の性分。