色のない世界。【上】
俺に向けた笑顔とは逆に、兄貴への笑顔は完璧に腹黒い笑み。
「いつ兄はもちろん夕飯運ぶの手伝ってくれるよね?」
兄貴をこき使えるのは恐らくこの世で梨緒ぐらいだろ。
俺がこき使おうとしてもからかわれて終わる。
兄貴は「しょ、しょうがねぇな…」と苦笑いしながら重い腰を上げた。
俺の鞄を部屋に置きに行って帰って来たヤマトも梨緒に捕まってまた戻って行った。
最初に言ったとおり、俺の家族は変な奴ばっか。
そんな奴らの中で俺は生活してる。
普通の家庭が羨ましくも感じる。
主要な組員も変な奴ばっかだし。
ここは変人が住まう極道一家と言ってもいい。
そんな組が日本随一とか呼ばれてると、何だか笑えてくるのは俺だけだろうか。