色のない世界。【上】

absolute obedience





【side 涼音】




目的地へとゆっくりと足を動かす。




外はすっかり暗くなり、私の黒いスーツは闇に溶けている。




暗闇の中、ヒールをカツカツと鳴らして歩いていくと黒い車が止まっている。




私が近付くと自然と車のドアが開く。
襟巻きに顔を少し隠しながら車に乗り込む。




車は静かに空いた道路を走っていく。




今日はお嬢様の近状報告のために本家まで外出。




ほんとはお嬢様のお側を片時も離れたくないけど、この命令には逆らえない。




所詮私は下の人間。
武術に優れていても、お使いする人には逆らえない。




お嬢様のお側を離れたくないのもあるけど、本家に行きたくないのが本音。




あそこは嫌いだ。
純潔なお嬢様とは違い、あそこには薄汚れたお嬢様の家族がいるから。




最早家族とは言わないだろう。
お嬢様は本家にとっては"道具"にすぎないから。



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