色のない世界。【上】
"感情"という言葉を指でなぞる。
皆は知る必要はないと言っていたけど、どういうものなんだろう…
"外の世界"の人達は皆もっているの?
"感情"というものを。
私と同じ運命にあったお母様は"感情"というものをもっていた。
どういうものなのか小さい頃、聞いたことがあった。
『あなたは知らない方がいいわ。私達"道具"にはとても重いものだから…』
そう言ってお母様は微笑んでいた。
私のような"道具"にはいらないもの。
あっても邪魔なだけ。
…でももし…
「もし…知ることができるのなら…」
小声で言って、開いている窓を見る。
外から風と共に桜の花びらが入ってきてる。
その時、窓から黒い物体が入ってきた。
姿が分からないほどに速かった。