色のない世界。【上】




そんなことを考えている間に呼び出された部屋に到着する。




今回の報告はきっと"解禁日"への重大なことになるだろう。




厳つい木製の扉をノックする。




「…柊 涼音、ただいま参りました」




誰か見てるわけでもないのに癖で頭を下げる。




部屋から「入れ」の一言だけが聞こえた。
私は失礼しますとまた軽くお辞儀をして扉を開けた。




部屋の中は中世ヨーロッパの貴族の部屋のような高貴さを漂わせる部屋。




異様に広いが、机は一つしかなくて壁には様々な大きさのテレビがズラリと並べられている。




これが九条院家トップの部屋。
そして一つしかない机にいる白髪混じりの男性。




九条院 重文(くじょういん しげふみ)。
現九条院家の当主であり、この大財閥の最高権力者。




私は九条院家の人間が嫌いだから、もちろん重文様も嫌いだ。
この人こそまさに自分の思いのままにお嬢様の母君を縛り付け権力を手に入れた男。




要は自己中心的ということ。



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