色のない世界。【上】
心の考えを読まれないように重文様に近づき、片膝をついて頭を下げる。
私が頭を下げてる時に感じる重文様の目つきは鋭いもの。
私をお嬢様を"守る道具"としか考えず、蔑み、見下す目つき。
しばらく私を見下していた重文様の口が開いた。
「…久しいな、涼音。美桜はどうしてる、変わりなく過ごしているのか」
"変わらず過ごしているのか"
これは"道具"として変わらないのかという意味でしかないだろう。
私の見る限りではお嬢様に変わりはない。
そう、見る「限り」では。
「…美桜お嬢様にお変わりはありませんが、このところお嬢様が外の人間との接触がありました」
「外の人間と…だと?」
頭を下げているから重文様の表情は分からないが、きっと一変したに違いない。
お嬢様が外の人間と接触することは九条院家にとって重大な事件だから。
「はい、ここ一週間ほぼ毎日のように外の人間が屋敷にやってきてはお嬢様とたわいのない話…」
バンッ