色のない世界。【上】
女と答えればその怒りは収まるのか。
いや、女であっても重文様はその人間を殺すだろう。
なら正直に答えるまで。
「…屋敷のメイドに確認させたところ、外の人間は"男"とのことです」
男と言えばもっと怒るかと思ったのに、部屋は沈黙で静まり返っている。
怒るどころか重文様がふっと笑う声が聞こえた。
私は不思議に思って顔を上げた。
聞こえた通り、重文様は不敵な笑みを浮かべ天井を仰いでいる。
するといきなり私を睨んだ。
「男ならすぐに殺そうかと思ったが、美桜の"解禁日"も近い。事を公にする訳にはいかない。…涼音、あれを使って美桜を逃げないようにしておけ」
「…っ!!」