色のない世界。【上】




今、何て言った?
この男は正気か?




あれと言われてすぐに分かった。




お嬢様のお母様、つまり重文様の奥様にも使ったことをしろとこいつは言った。




奥様の時も重文様が命令をした。
またそれを今度はお嬢様にしろというのか。




私はすぐさま反対する。




「あれとは桜花(はるか)様と同じことをということですか…!?お嬢様を見る限り、外の人間と逃げようというご様子はありません!そこまでする必要は…」




「見る限りか?お前の見る限りは信用ならん。お前が見てないとこで美桜は外の人間と接触していた。でもお前はそれを変わりないと言った。お前を信用するに値しない」




さっきあんな言葉の綾を使ったことを後悔した。
こいつを少し怒らせてみようと考えた私が浅はかだった。




重文様に形勢逆転された。




何だかこいつに全て私の考えを読まれていたかのような気分になった。




重文様は余裕そうに笑みを浮かべている。
私はこいつがさらに嫌いになった。



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